WTO紛争処理機関の決定の

地理的表示の国際保護に及ぼす影響

解題/翻訳 高橋 梯二

 

解題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

WTO紛争処理機関の決定の地理的表示の国際保護に

及ぼす影響・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

地理的表示に関する以前の交渉・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1. WTOにおける地理的表示・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2. 地理的表示についての対立・・・・・・・・・・・・・・・・・・

紛争処理機関のパネルによる結論の分析・・・・・・・・・・・

1. 商標と地理的表示の併存(coexistence)・・・・・・・・

2. 内国民待遇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ヨーロッパと世界における地理的表示保護の将来・・・

1. 地理的表示の性質と特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2. AOPIGPの将来の方向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


解 題

髙橋 梯二

          東京大学大学院農学生命科学研究科非常勤講師

 本稿では、20076月フランスの農業経済誌Economie Rurale 299/Mai-juin 2007に掲載されたデルフィンヌ・マリービビアン(Delphine Marie-Vivien及びエリック・テブノーモテ(Erik Thévenod-Mottetによる論文「WTO紛争処理機関の決定の地理的表示の国際保護に与える影響(Une décision de l’organe de règlement des différends de l’OMC. Quels impacts pour la protection internationale des indications géographiques ?」の翻訳を紹介する。また、この論文を理解する上での参考として地理的表示に関するアメリカの申し立てによるWTOパネル報告(20055月)の重要部分の抜粋の翻訳を紹介する。

100年近くにわたって関係国間で論争が続いてきた地理的表示については、ウルグアイ・ラウンドで交渉が行われ、1994年のマラケッシュ協定のパッケージの一つである「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)の成立によって多くの国(WTO加盟国)が認める知的所有権となった。しかし、この協定における地理的表示はEUとアメリカの農産物・食品貿易の理念の違いのギリギリの妥協によって成立したもので、異なる解釈の余地を多く残す協定であった。

それだけに、協定成立後、数年してから、ヨーロッパとは異なる農業の伝統をもつアメリカ及びオーストラリアは、地理的表示の高い保護を目標とし、厳格な規制を定めているEUの制度は、多くの点でTRIPS協定及びGATT協定の自由貿易の原則(内国民待遇、最恵国待遇)に違反するとの申し立てを行い、2003年からWTOのパネルにおける係争となった。2005年にパネル報告が出され、EUはこれを受け入れ上訴はしなかった。パネル報告は、EUの規則について主として内国民待遇の原則の適用及び地理的表示と商標との関係についての解釈を行ったが、本論文のパネル報告の総合的な評価としては、パネル報告は地理的表示に概して好意的で、高い保護を求めるEUの規則は特殊なものではなく国際協定に違反しない制度であると認めたと解釈されるとしている。

このパネル報告によって、開発途上国等は、EUの制度に近い地理的表示制度を導入する国が多くなり、アメリカや日本などのように地理的表示を商標や不正競争防止法だけで保護するのではなく、独自の法制度(sui generis)を制定して保護する国が多くなってきている。アジアでは、中国、韓国、タイ、ヴエトナム、インドなどは地理的表示独自の法制度を導入している。

本論文は、まず、内国民待遇の原則から見たEU規則の違反点と地理的表示と商標との併存を認めているEU規則の妥当性に関するパネルの結論を紹介している。しかし、パネル報告で地理的表示の国際協定上の解釈について前進はあったものの、協定の不明点はまだ多く残され、さらに、パネル報告の結論をEUが受け入れたことから生じる問題点も指摘している。

たとえば、地理的表示は、権利の性格として特定地域と結びついた特徴を持つ他のものとは決して同じでない産品の保護であり、自動的に国際保護が生じる著作権にも近い面もあるが、他の知的所有権と同様に属地主義をとっており、この場合、原産国が保護の有効性を決定するのかあるいは申請を受けた国が決定するのか必ずしも明らかになっていない。このような状況にある時、地理的表示制度の保護の内容が国によって大きく異なるだけに、国際間でどのように保護を行うのか関係国間の協力が必要であるが、アメリカ等はこのような国際協力を拒否しているとしている。したがって、EU委員会は2国間協定による両国間の保護も重視している。また、内国民待遇の原則によりEUは、第3国からの登録申請を第3国の国民から直接受け入れるようにしたが、第3国の政府の介入なしで、また、EU加盟国の介在なしに、EUのものとは内容がかなり異なる第3国の申請をどのように公平に処理できるかという問題を抱えることになったとしている。

さらに、この論文は、地理的表示においては二つの基本的概念がなお、対立しているとし、一つは、市場機能に関する一般的な手段による地理的表示の保護、つまり、不公正取引に対する規制、商標権による保護の概念である。もう一つは、ヨーロッパによって推進されている拡大保護の概念、つまり、地理的表示独自の保護(Sui generis)と地理的表示制度が産品の高付加価値化と多様な消費者の要求に対応する機能を持つことに着目した地理的表示制度の農業政策及び地域開発政策への統合であるとしている。

日本が現在置かれた農業の状況と地方経済の振興の必要性、また消費者の多様な品質に対する強い要求を考慮し、さらに、輸出の振興等を図るうえで世界の多くの国から認知される地理的表示とするため、ヨーロッパ型のような独自の地理的表示制度を構築する必要がないのか早急に検討する必要があると思われる。

WTO紛争処理機関の決定の地理的表示の国際保護に及ぼす影響

               

デルフィンヌ・マリービビアン

          エリック・テブノーモテ

                髙橋 梯二 訳     

はじめに

地理的表示(IG)の法的保護は、知的所有権に関する法律を取り扱う国際機関によって数十年激しく議論されてきた問題である。その一つは、知的所有権世界機関(Organisation mondiale de la propriété intellectuelle, OMPI)である。また、数年前から集中的に議論してきたのはWTOで、特に知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(ADPIC, TRIPS,19941である(Lorvellec, 1999)。

 OMPIにおける過去の合意は、任意に加盟している国によって自由に交渉されたものである。次に1958年のリスボン協定があり、これは、フランスの原産地呼称制度(Olszak 2001)及びヨーロッパの保護原産地呼称(AOP)に従った原産地呼称の保護を定めているが、OMPIの加盟国183に対して25カ国しか関係していない2。しかし、WTOへの加入(その創設時及びそれ以降の加入)は3

TRIPS協定を含むパッケージ全体を受け入れることが必要になっている。TRIPS協定の交渉は難しく、1994年に条文が成立したが、ヨーロッパとアメリカの理念(vision)の妥協であり、正確にすべての問題を解決することからは程遠く、協定は異なる解釈の余地を残すこととなった(O’Connor, 2004)

 このような状況の下でヨーロッパの規則に対するアメリカ及びオーストラリアの異議申し立てに基づいてなされたWTOのパネルの勧告・指示は、地理的表示の重要な進展の要素となったのである。

 

地理的表示に関する以前の交渉

紛争処理機関(ORD)の決定は地理的表示の緊迫した交渉の雰囲気の中で行われた。この決定によって、紛争参加国は今後の交渉の動向をある程度見通すことができるようになった

1. WTOにおける地理的表示

TRIPS協定は、WTO加盟国すべてに適用されるので、地理的表示の保護を扱う最も一般的な枠組みである。地理的表示はTRIPS協定において次のように定義されている。

22条 地理的表示の保護

1 この協定の適用上、「地理的表示」とは、ある商品に関し、その確立した品質、社会的評価その他の特性が当該商品の地理的原産地に主として帰せられる場合において、当該商品が加盟国の領域又はその領域内の地域若しくは地方を原産地とするものであることを特定する表示をいう4

 TRIPS協定は、地理的表示についてWTOの加盟国に適用される2種類の保護の水準を定めている(Audier 2000)。

―第222条による一般的水準の保護は5、産品の真の地理的原産について公衆を誤認させる時、その名称から地理的表示を保護するものである。

―第23条によるより高い水準の保護は、ワインと蒸留酒にしか適用にならない。商標の形態になっている場合も含み、産品の真の地理的原産に合致していない地理的表示の使用は、産品の真の地理的原産を示す表示が伴っていたとしても禁止される。

さらに、第234条はワインについて保護を容易にするため、地理的表示の多国間登録の確立を規定している。

 協定成立後も1999年からWTOにおいて交渉が続けられてきたが、交渉には二つの柱があった。

1の柱は、EU、スイス、その他のヨーロッパの国及び開発途上国から提案されたもので、ワインと蒸留酒に適用される高い水準の保護が他のすべての産品に拡大適用されるべきとの要求である。事実、この追加的保護はウルグアイ・ラウンド時の交渉の失敗によってワインと蒸留酒にしか適用されなかった。

EUは、現在、第23条によってワインに対してとられている水準の保護を産品の種類を区別することなく適用することを提案した。スイスは産品とサービスのすべての地理的表示について、つまり、原産地呼称と単純な原産地表示について、統一的に保護することを提案した。これらの提案は、産品をめぐる地方の歴史に根付いた生産によって実施されている農業及び農村の発展の展望に対応するものである。すべての産品にこのような保護を拡大することに原則論として反対し、貿易の絶対的自由を希求するアメリカと妥協を図るため、ワインと蒸留酒のみについてEUによって提案された保護が適用されることになった。これらの地理的表示産品には、既にこのような高い水準の保護が二国間協定によって達成されていたのである。

 第2の柱は、地理的表示の多国間登録の性格(強制力があるかないか)と手法の問題である。この登録は強制力がある登録という仮定で登録に参加するすべての国において保護の自動的承認を与えるものか、又は、原産の国において保護されている名称がどのようなものかを知るための単なる情報であるべきかという問題である。 以上の二つの柱は、保護の拡大に賛成する国の意見を明らかに反映したものであった(Addor et Grazioli,2002)

また、追加的な要素としてはWTO農業交渉の枠組みの中でEUから提案されたものがある。これは、Claw backリストと呼ばれ、このリストに掲載される地理的表示はすべてのWTO加盟国において保護されるというものである。Claw backリストは非常に有名な地理的表示しか載せておらず、議論を混乱させるようにも見え、また、有名な地理的表示の利権の単なる確保のようでもあり、さらに、地理的表示制度を導入しつつある開発途上国にとっても重要な争点であった。

 以上のように交渉の多岐にわたる側面と各国の異なる立場から地理的表示の保護は、その意思がすべての加盟国によって合意されることとはかけ離れたぼんやりした絵のようなものしか描けないものとなっている。

2. 地理的表示についての対立

地理的表示については次のように二つの概念の対立がある。

一つは、市場機能に関する一般的な手段による地理的表示の保護、つまり、不公正取引に対する規制、商標権、現在の形のTRIPS協定である。もう一つは、ヨーロッパによって推進されている拡大保護の概念、つまり、地理的表示独自の保護(Sui generis)、強制力のある登録制度、地理的表示制度の農業政策及び地域開発政策への統合である。

 これらの異なる概念を決定する要素は、産品の特別の質を保証する生産基準(cahier des charges)を尊重するかしないかの義務である。生産基準自体は内容が幅広く、たとえば、アメリカの証明商標6のような産品の出所の地理的地域を示す単純な基準から生産の方法や調製と加工の方法を特定する生産基準まである7 。ワインについては、アメリカはアメリカブドウ栽培地域(American Viticultural Areas)に示されているブドウの地理的原産のみを定めている。地理的表示を強く保護する国(たとえばヨーロッパ)の生産基準は、ブドウ収穫量の最高限度に関する規定も含んでいる8

 土地との結びつきの存在の下に構築されている地理的表示の保護は、競争市場において生産者の利益を守る独占を付与する。価格競争における国の位置付け、輸出の性格、農業の多面的機能を認めるか認めないか、WTO交渉における他の分野との関係における外交戦略がこれらの概念に関係している。また、地理的表示は、WTOの農業交渉の一角を占めており、農業補助金交渉の中で補助金の削減を補う高品質の産品の認知を導く政策と関係している。

 TRIPS協定が地理的表示の手法と規模を各加盟国で決めるよう任せているので、開発途上国が要求事項をみたしつつも、近年独自の法的手段を導入してきているのは、このような複雑な政治的背景の下にいるからである。開発途上国は、独自の制度を導入しない場合は、先進国側の対立した強い圧力からヨーロッパのモデルを採択するかアメリカのモデルを採択してきた。また、開発途上国は、必要に応じて、手工芸品、天然産品(produits naturels)あるいは工業産品を対象に含めた。TRIPS協定はその定義によって、名声のみが地理的原産を証明する産品についてもその保護を認めている。

 インドは、1999年以来9特別の法律によって地理的表示を定め、農産物、手工芸品、天然産品及び工業製品を対象にしている。保護は、TRIPS協定に定められている標準的な水準のものである。協定第23条に定められたワインと蒸留酒に適用できる保護は政府の決定によって適用となる。インドの法律は、地理的表示の所有者となる登録申請者と生産基準を満たすことによって地理的表示を使うことが認められる使用者とを区別している。

 EU1992年以来、地理的表示について法的な地位を与え、保護原産地呼称(AOP)及び保護地理的表示(IGP)を定めている10。これらは、ヨーロッパの南の国の及びリスボン協定(OMPI 195811の概念を取り入れたもので、その後は、TRIPS協定の定義となった。

この保護は、地理的表示の使用が認められる産品の特質に関する条件を含む独自の制度によって規定され、また、EU域内はもとより域外の地理的表示にも適用される制度としてEUによって提示されたものである。このような考えをもとに、規則2081は、2003年にEU域外の地理的表示の登録の手続きを明確にするため改正された12。また、内国民待遇に関し、TRIPS協定の義務上、差別的と糾弾されないようにする必要があった。

 アメリカとオーストラリアからEU規則2081TRIPS協定に合致していないという異議がなされたことにより、内国民待遇の原則及び地理的表示と商標との併存に関し厳密な解釈がなされたことによって、国際交渉は新たな局面を迎えることとなった。

 WTOの紛争処理機関は、TRIPS協定で定められた最低限の基準に比べ非常に高い水準の保護を付与しているEU規則の合法性を分析し、EU規則2081は他のWTO加盟国に認められないような特殊な制度ではないと認め、地理的表示の保護義務を再定義した。

紛争処理機関のパネルによる結論の分析

ある国が義務を実行していないと考える加盟国は、紛争処理機関に訴えることができる。その紛争処理手続きはパネルの設立を予定している。その役割は当事国の協議によって異議を審査し、勧告を含む報告を行うことである。地理的表示に関しては2005420日に報告が採択され、EUは上訴しなかった。

 我々は、パネル報告にある商標と地理的表示の併存の認知を取り上げ、また、内国民待遇の義務をより深く考察し、パネル報告の二つの主要な結論を分析することとしたい。

1. 商標と地理的表示の併存(coexistence

 EU規則2081/92は、地理的表示の保護(登録)以前に寄託されていた商標(既存の商標)は、AOPIGPの登録がなされても有効に存続し、また、既存の商標の所有者は、商標が有名である場合に限ってAOP又はIGPの登録に反対することができると規定している。パネルは、EU規則のこの規定は商標の所有者の名称使用の排他的権利に対する限定的な例外(exception limité に当たるとしてTRIPS協定に違反していないことを確認した。事実、TRIPS協定がその第245条で地理的表示の保護の例外として既存の商標の継続使用を規定しているが、この既存の商標の継続使用の権利では地理的表示制度のもとで名称を保護(登録)することに反対はできないとパネルは解釈した。これは、商標の権利に対する限定的例外を規定したTRIPS協定第17条に基づくとされた。たとえば、記述的表現の公正な使用に関してこの例外は商標の所有者と第3者の正当な利益(intérêt légitimes)を考慮することが条件になっている。

 商標の所有者は、地理的表示の所有者が地理的名称を使用することを防止する権利を行使できないことを例外として、与えられた権利を行使することができる。パネルは、地理的表示が厳格な生産基準を満たしている産品にしか使用できないこと及び地理的表示の非常に高い特異性(spécificité)を認め、商標の対象となる通常の産品とは大きく異なることからこの例外を認めた。したがって、商標の所有者は、名称の使用の独占が制限されるのはこの特定のタイプの産品についてのみであり、その他のすべての産品に対しては商標の権利(名称の排他的使用権)は侵されない。パネルは、商標の対象となる一般的産品とは異なる厳格な技術的基準を満たす地理的表示産品の特異性を認めた。

 パネルは、また、産品の定性的な違いによる以上の側面と同時に、量的な違いもあると示唆している。つまり、地理的表示に指定された産品の市場規模は、それ以外の産品に比較し十分小さいということである。これは併存の可能性は高くないことを意味する。地理的表示と商標の各制度に関する法的規則はこのような併存の状況を避けるようにすべきである。というのは、地理的表示の名称は識別性がなく商標の対象とは原則としてなりえないので、その地域の生産者すべてに使用可能となるようにしておかなければならないからである。

 結論としては、パネルは地理的表示全体について商標とは独立の知的所有権として認めており、先願主義の理論で、後から申請された地理的表示の保護(登録)を禁止することはできないとしている。

 アメリカのこれに対する異議のケースは、アメリカのビール会社の属する商標のBudweiser及び Budとチェコのビールの地理的表示 Budejovicke pivo, Budejovicky mestansky var,  Ceskobudejovicke pivoの対立である。南アフリカの高等裁判所は、混同のリスクをもってチェコの地理的表示を無効としたが、逆にオーストラリアの連邦裁判所13及びニュージーランドの控訴審14は、逆の決定をし、ラベルに地理的表示を付することを認めた。

2. 内国民待遇 

アメリカ及びオーストラリアからなされたヨーロッパの規則に関する最初の異議は、最恵国待遇の原則と関連して内国民待遇の原則を遵守していないということであった。これら二つの原則は、TRIPS協定及びGATT協定によって国際公法の一般的原則とされている。TRIPS協定による内国民待遇によれば、WTOの加盟国は、知的所有権に関し他の加盟国の国民に対して自国の国民に与えられているものより不利でない待遇を適用しなければならないことになっている。また、TRIPS協定の規定は、知的所有権を保護しようとする者の国籍によって差別してはならないと規定している15。最恵国待遇については、あるWTO加盟国によって他の国民に認められたすべての優遇措置、特権、免除は直ちにかつ無条件でWTO加盟の他のすべての国民に与えられなければならないとされている。したがって、異なる国からの知的所有権の保護の申請者間で異なる水準の待遇を設けることは不可能である16。この規定は、二国間協定によって一定の国の者が享受するより高い水準の保護を与えることに反対しているように見える。特に、外国の国民が自国の国民よりも優遇されるリスクである。(Charlier, 2005)。

 EUにおいて第3国における地理的表示を認知するため行われた2003年のEU規則2081/92の改正は、その第12条において第3国からの農産物・食品の登録については、次の二つの条件が課されると定めた。

―生産基準(cahier des charges、登録に対する異議の手続き、管理機関の内容について第3国の法律がEU規則2081/92tと同等であること

―第3国におけるヨーロッパの地理的表示の保護の互恵性

パネルは、このEUの同等と互恵の義務のいくつかの点でEU規則は第3国の国民に対して差別的であると判断した。したがって、第3国はEU規則と同等の規則を採用する必要はない。特に、地理的表示の申請及び異議の手続きに関して、パネルは、第3国の申請者が地理的表示の有効性の審査について自国の公的機関を通じてEU委員会に届け出なければならないことを規定しているEU規則を不当とした。事実これらの条件は、ヨーロッパの申請者に課せられるものであるが、これらの申請者にとっては自国の公的機関は、ヨーロッパ規則に組み入れられており、よって、自国の公的機関への申請の提出が義務付けられている。しかし、第3国の公的機関はこのような関係になく、第3国の者はヨーロッパの者に比べ不利な取り扱いを受けることとなるとしている。

さらに、パネルは、第3国の管理機構に政府機関が参加しなければならないという義務も否定した。パネルは、EUによって要求されている管理の水準は合法と認めたが、パネルの批判は、国家の参加を義務としていることについてなされた。管理への国家の参加を禁止するものではないが、EUによって要求されるものでなく自発的な参加であるべきとした。

パネルは、その報告において、各国の国民に対して内国民待遇を規定するTRIPS協定第31条(国民間で差別がないこと)にEU規則が合致しているかどうか、また、産品に対して適用となるGATT1114条(同種の産品間で差別がないこと)に合致しているかどうかについて結論を出している。したがって、TRIPS協定及びTGATT協定のこれらの条文に関する判例の解釈を検討することによってこの係争に関する同質性と異質性を見出すこととしたい。

TRIPS協定第31条をめぐる判例

 内国民待遇の原則に違反しているとの申し立てに基づく係争の前例は、アメリカのハバナクラブ事件である。パネルの報告は上級委員会に上げられ、上級委員会はパネルと異なる決定を下した17。上級委員会がもたらした前進は、内国民待遇の条項の解釈にあった。この義務は、現行の法律の規定が差別的である時に違反しているとみなされ、たとえ、公的機関がその法律の条文の適用の可能性が極めて低いと認めているとしても違反とみなした。(キューバ革命によってキューバ当局がアメリカの資産を接収した後に商標の使用を継続する企業から要求された商標の登録をアメリカの特許商標局が拒否するという事実があった。)

 いずれにしても、TRIPS協定以外の知的所有権に関する条約においては、内国民待遇の義務に対する一定の例外が規定されていた。著作権の保護に関するベルヌ条約第78)条は著作者の国で認められている保護の期間を他の国において制限することができると規定している。この場合保護が要求されている他の国においては著作者の国の保護の期間よりも長くないことが必要である。

しかしながら、ハバナクラブ事件以降は、内国民待遇の原則は、TRIPS協定の柱を構成する例外のない原則と理解されなければならない。他の国の者は内国民より不利でない待遇を受けなければならない。TRIPS協定第31条は厳密に法律どおり適用されると解釈された。つまり、第31条は、法的資格に適用されるのである。つまり、権利の国籍又は呼称の権利に適用され、地理的表示の所有者の国籍に適用されるのではない。というのは第3国の地理的表示について差別が存在するかの問題である。たとえば、アメリカの地理的表示に対する差別が存在するかどうかということであり、ヨーロッパにおいてヨーロッパ人と同じ権利をアメリカ人が享受できるかというアメリカ人に対する差別の問題ではない。

 パネルは、国民に対する内国民待遇の適用ではなく申請者の国籍と生産の場所とが同じであることに基づいて産品に対する内国民待遇を適用している。しかし、他の知的所有権についての基準は国民の間に差別がないことである。ヨーロッパの規則は国籍がどうであれ、EUの域内にいるすべての生産者の間に差別がないことである。

 この問題について係争に参加した第3国は、地理的表示の地理的地域が存在する国の機能の差別は、国民の差別になると指摘した。というのは、産品の原材料の生産は指定された地域でなされるからである。地理的表示の場合は申請者の国籍と産品の生産の場所との関連性は、商標や特許より強い。 

GATT1114条をめぐる判例

 第1114条は、産品に対する内国民待遇に関する規定である。この規定によれば、他の加盟国から輸入されたある加盟国の域内における産品は、国内原産の同種の産品(produits similaires, like products)に認められる待遇より不利でない待遇を受けなければならない。このGATT規定に合致しているかどうか判断するためには、次の要素が考慮されなければならない。

― 問題となっている輸入産品と国内産品が同種の産品であること。問題となる措置はその産品の販売、購入、輸送、流通及び使用に影響を与える法律または規則である。

― 輸入産品が不利な待遇を受けていること。

 したがって、主要な問題の一つは、同種の産品の決定/資格〈qualification〉である。GATTの判例は主として同種の産品の決定についての異議に対する裁定である。問題は、第3国の地理的表示産品とEUのそれとは同種の産品と考えることができるのかを知ることである。同種の産品の決定に関するWTOの判例は非常に多い。「カナダ及びEUの石綿(amiante)及びそれを含む産品に影響を与える措置」に関する決定WT/135/AB/Rは、比較的正確な基準を示している。一般的な次の4つの基準が使用される。

      産品の内容、性質、品質

      産品の最終的使用

     産品の味、消費者の習慣

      産品の関税分類

 これらの基準に加え、産品間の競合の存在が必要であり、これらの基準はそれぞれ独立に検討されなければならならず、考慮される法律の規定に関して同種性が分析されなければならない。

 地理的表示に関するパネル報告では、次の二つの基準との関係で第3国からの産品がヨーロッパの産品と何に基づいて同種であるかを自問することができたはずである。

      産品の内容、性質、品質

      産品の味、消費者の習慣

 事実、地理的表示として認定された産品は、特別の特徴を有する産品であり、その保護の基礎は、他の地理的地域からのいかなる産品も性質、品質について同じ特徴をもっていないということである。また、それは、風味と消費者の習慣が他の産品よりもその産品を選択するようになっていないと解釈することもできる。これは産品の代替性の問題である。

仮に同種の産品でないという決定に基づけば、比較することができない産品間でGATT1114条による差別はありえないと議論することによって、パネルの結論は違ったものになったであろう。

 しかし、産品の物理的な内容、風味及び消費者の習慣において第3国からの産品とヨーロッパの産品間で同種でないという決定をどのように効果的にできるかと自問することもできる。事実、AOP又はIGPに認定されている異なるEU加盟国の異なる産品は、異なる内容、性質及び品質を持ち、EUの各国間で異なる風味、消費者の習慣に対応している。しかし、十分に異なる産品に対して差別することなく、EUのすべての産品について同じ規則が適用になっているし、同じ権利を享受している。

 結論としては、たとえ、第3国からの産品が特別なものであったとしても、すべての産品がTRIPS協定の地理的表示の定義を満たした地理的原産に結びついているという事実をもって、GATTの定義に従った同種の産品であるということを防げないのである。

ヨーロッパと世界における地理的表示保護の将来

 紛争処理機関のパネル報告及びTRIPS理事会の議論は、繰り返し起きる地理的表示の定義とその権利を行使する方法の問題を扱っている。将来のシナリオについては、EU域内の側面、EU規則2081/92の制度から起きるヨーロッパ域外の地理的表示との関係の側面及び多国間及び二国間交渉に関連する側面がある。

1. 地理的表示の性質と特徴

パネルは、地理的表示は、他の知的所有権と同様、私法としての所有権に属することを確認している。また、この権利を保護することはすべての加盟国にとって義務である。ただ、保護には内国民待遇と最恵国待遇が義務となっている。地理的表示については、他の知的所有権と同様、その認知と登録を申請するかどうかを判断し、第3国に申請を行うのは国家ではない。しかし、パネルは、法的資格(titre juridique)(地理的表示)に対する内国民待遇の原則の適用の結果、また、それが他の知的所有権と異なり、人に対してではないことなどからみて、地理的表示の使用者と原産の場所との密接な結びつきを確認している。申請者と原産国との強い結びつきを確認したが、パネルは、知的所有権の一般的原則である属地性に近づくことを目指している。つまり、権利は法的資格が有効である地域に一方的に与えられるということである。商標、特許も属地性をとっている。

 知的所有権のもう一つの古典的な原則は、法的資格の独立性である。たとえば、ある特許は、国によって特許性が異なることから一定の国には適用になるが他の国には適用にならない。逆に、著作権については、国ごとに正式な認知の手続きを必要とせず、ベルヌ条約加盟国すべてにおいて保護は自動的に生じ、作品ができたときからすべての国において権利が与えられる。ここで、オリジナリティ、文学・芸術作品の保護を与える基準が地理的表示の審査が関係する基準と同様であるということから、著作権に適用されている認知と同じ方式の下に置くことができるかどうかということである。著作権においては、個々の作品は著作者の個性の投影で、他と異なるという事実から著作者の権利におけるオリジナリティが生じている。地理的表示の認知を受けている産品の場合は、名声、品質、特質の認定に基づき、その産品は他の産品と異なるという前提である。著作権のオリジナリティは地理的表示に与えられた特殊性に対応している。これと関連し、リスボン協定は18、原産地呼称の国際保護について原産国のみが呼称の要求の有効性を決定でき、保護は協定参加国に自動的に適用になるとしている(ただ、1年間の異議申し立ては確保されている)。

知的所有権の資格条件及び権利の属地性によって、すべての国は、すべての第3国からの産品について土地との結びつきを決定できると仮定されている。このようにしてEU委員会は、第3国からの申請に対して、EUの加盟国が中間的役割を果たしているEUの申請者に対してと同じような役割を果たすことができるであろうか。原産国の当局に地理的表示の有効性及び登録に対する異議の有効性及び有効な管理についての決定を任せるのが適当としているようにも見える。しかし、国家間での有効性の確認や強制されない申請の提出に関するこのような国家間の協力は、アメリカによって完全に覆されてしまった。かかる協力は技術的な基準の分野では存在するのである。ワインと蒸留酒の分野においてすら、リスボン協定の加盟国を除いて、国際的な認知の制度は、完全に政府の権限の下にあり、2国間協定がある場合にのみ国際的認知が可能なのである

 TRIPS協定によって定められ、紛争処理機関によって確認された原則は、原産国において保護されていない地理的表示は保護する義務がないことである。問題はだれがこれを評価できるかである。保護を要請された国なのか原産国なのかということである。少なくとも原産国における有効な法的権利が必要ということで、法的資格(titre)の独立性の例外となる。このことは、国家間の協力が必要になるということであり、保護の認知を評価できる要素を定める必要があろう。EU委員会にとっては、名称が法律に則して登録され、地理的表示の使用は技術的生産基準が備わっていることが最低限のように見える。不正競争の名目で保護され、正式に登録されない地理的表示については不明確である。

2. AOPIGPの将来の方向

ヨーロッパの制度の機能

内国民待遇の原則の適用は、開発途上国にとって積極的な影響を及ぼし、開発途上国は、EUの法律より弾力的な国内法を実施できることとなった。それにもかかわらず、EUAOPIGPの登録の基準を満たすことを条件としてEUの生産者の権利と同じ権利の認知を受けることができるようになった。カフェ・デ・コロンビアをヨーロッパの制度のAOPとして認知を受けるため、コロンビア政府から寄託された申請は、第3国からなされた最初のものである。これについての処理は、EU域外の地理的表示についてEU規則2081/92を適用する最初の試金石となった。この寄託はコロンビア政府を通じてなされたことに注意すべきである19

 WTO紛争処理機関の勧告に従って、EU規則2081/92が改正されてから、第3国からのAOPIGPへの登録申請が急速に増加することが予想される。

申請は、内容及びEU規則の基準への合致について関係する加盟国からEU委員会に知らされ、EU委員会は、申請の書類が整っているかを確認するにとどまっている。登録に対する異議についても加盟国とEU委員会という二つの段階が機能することになっている。しかし、第3国からの登録申請については、異議も含め、EU加盟国あるいはその国を通さず、直接EU委員会に提出できる。

EU委員会と加盟国の権限の分担について次の二つの可能性に則して明確にしていくべきである。

 その一つは、申請文書の扱いについて加盟国により多くの権限を付与することである。しかし、国により手続きの不統一が生じることが問題であり、第3国からの申請に関しても問題が残る。もう一つは、EU委員会への権限の集中である。最終的には、AOPIGPの登録について全体的に決定する一つの機関を通ずることである。この方式は商標については既に成立しており、EUの商標登録の申請は申請者から直接域内調整事務局(Office de l’harmonisation dans le marché intérieur (OHMI))に寄託するか加盟国の商標事務局を通じて寄託する。

追加的保護のすべての産品への拡大

 パネル報告は、一般的には、地理的表示に好意的であると解釈することができる。 GATTの定義においては、内国民待遇の義務に違反していることに使われる要素は、輸入産品が国内品より不利でない待遇を受けなければならないかどうかである。アメリカは紛争処理機関において、AOP又はIGPの取得によって地理的原産との結びつきが認知された産品は、AOPIGPを享受できない産品よりも有利な待遇を受けると主張した。アメリカとオーストラリアがパネルでの論争をワインと蒸留酒以外の農産物に集中したという事実及びパネルがワインと蒸留酒以外の地理的表示に与えられた保護の水準が商業上の利益となることを認めた事実は、農産物及びワインと蒸留酒について同じ水準の保護を導入する方向にTRIPS理事会の交渉を推し進めることとなりえよう。このような進展は、地理的表示の登録制度がワインと蒸留酒を含み、すべての産物に適用されるように実施されることを促進するであろう。

 最後にAOPIGPを農産物・食品以外にも登録の道を開き、開発途上国の要求にも対応していくようになろう。このようにして、ヨーロッパのAOP及びIGPは、歴史的に中核であった農業の分野のみからある程度解放されていくであろう。

地理的表示の多国間登録

ヨーロッパのAOPIGP制度の今後の数年の進展は、EUの歴史と重みからして地理的表示の多国間登録に関するWTO交渉とは無関係でないであろう。多国間登録は、ワインと蒸留酒について想定されているが、産品全体に検討対象が拡大していく可能性がある。ヨーロッパの登録は、第3国からの登録申請が多くなった時に多国間登録の基礎となるであろうし、さらに、複雑でWTOの拘束力よりも強力なスーパー登録(super registre)の基礎となろう。リスボン協定の登録制度の変更がこの問題に応えるものとなろう。既に実施されている制度がそれに代わるものと同様、純粋に事実上の(ありうる)提案となるであろう(Hugues,2003)。

結論 

20065月、AOP及びIGPに関する新しい規則510/2006が施行になった。WTOの紛争処理機関の決定に合致するよう規則2081/92を廃止して改正された。第3国の地理的表示の取扱いに関しては、すべての申請者に同様の権利が付与される。手続きについては、第3国は、AOP又はIGPの申請をヨーロッパの国民からの申請と同じように、また、自国で地理的表示として保護されている要素を示しつつ、EU委員会に直接行うことができる。原産国の政府を通じて行うことも可能である。第3国からの異議についてもEU委員会に直接行うことができる。ヨーロッパの申請者については、EU員会の審査の前に地理的表示の地域が存在する加盟国による事前審査の義務が適用される。地理的表示のEU事務局設立の選択は採用されなかった。EUは内国民待遇の原則を遵守する以上のような新たな規則を実施した。

 第3国とEU委員会の直接の結びつきは、EUの申請者にとっては、加盟国を必ず通さなければならないという点で差別となる危険性がある。第3国の規則がEUのものと同等であるべきという義務を新しいEU規則が課しているのであれば、第3国における保護はEUのものと同等であろうと想像することができる。EUにとってのリスクは、ヨーロッパの規則に従って十分に審査された登録申請とEUの規則とは全く異なる基準(特に、証明商標、生産基準のないもの)に従って保護されている第3国からの登録申請がEUになされることである。EU委員会は、第3国からの申請をどのように公平に取り扱うことができるであろうか。20076月に中国の産品について10件のIGP /AOPの申請がなされているが、これは、新しいEU規則を、法律が複雑で、EU規則とは同等性が低い第3国からの地理的表示をどのように適用するかの機会となろう。


※ Delphine Marie-Vivien et Erik Thévenod-MottetUne décision de l’organe de règlement des différends de l’OMC. Quels impacts pour la protection internationale des indications géographiques ?

1. 1994415日に署名されたマラケッシュ協定

2. 200671

3. 200691日現在149カ国

4. TRIPS協定第221

5. Abrégé art, par la suit

注:6. 「ダージリン」のアメリカにおける証明商標は、この茶は100%ダージリン地域からのものでなければならないと規定している。またインドの地理的表示では、栽培が認められる品種、加工方法についても定められている。        

注:7.  EU規則(CE)510/2006

8. アルデッシュの栗のAOCの認知に関する628日付け政令参照

9. 産品の地理的表示(登録及び保護)法、1999年、及び産品の地理的表示(登録及び保護)規則、2002 

注:10. 2006EUCE510によって置き換えられた。

11. 19581031日に署名された協定


12. EU規則(CE)N0 692/2003

注:13. 200245日、オーストラリア連邦裁判所「2002FCA390

  14. 2002年9月19日ニュージーランド控訴審CA158/01

注:15. TRIPS協定第31

16. TRIPS協定第4

注:17. WTO上級委員会、アメリカ Ominibus Appropriation Act of 1998

       WT/DS 176/AB/R, 2 January 2002

注:18. リスボン協定 OMPI1958  2006年現在22カ国

注:19. IGP「カフェ・デ・コロンビア」はEU規則CEN01050/20072007912日に登録された。EU官報 JOL,240,13 septembre 2007


参考文献

Addor F., Grazioli A. (2002). Geographical Indications beyond Wines and Spirits. A Roadmap for a better Protection for Geographical Indications in the WTO TRIPS Agreement. The Journal of World Intellectual Property, vol. 5, n° 6, p. 865-898.

 Audier J. (2000). Accord ADPIC –Indications géographiques. Office des publications des Communautés européennes, Luxembourg, 47 p.

-Charlier C. (2005). Le respect du traitement national dans le Règlement européen 2081/92 : une analyse du différend « Communautés européennes – Protection des marques et des indications géographiques pour les produits agricoles et les denrées alimentaires ». Actes du colloque SFER/ENITA « Au nom de la qualité », Clermont-Ferrand, 5-6 octobre 2005, p. 441-447.

-Hugues J. (2003). The Spirited Debate over Geographic Indications. Law Review, vol. XX, n° X.

-Lorvellec L. (1999). La protection international des signes de qualité. Droit et négociations internationales. Paris, INRA,Actes et communications, n° 16.

-Ngo M.-A. (2005). La protection des indications géographiques : les enjeux du mandat de Doha. Actes du Colloque « Au nom de la qualité », SFER/ENITA,Clermont-Ferrand, 5-6 octobre 2005,p. 415-420.

-O’Connor B. (2004).The Law of Geographical Indications, Cameron May.

-Olszak N. (2001). Droit des appellations d’origine et indications de provenance.Paris,Tec & Doc, 187 p.Économie rurale Numéro 299 (Mai-juin 2007) Enjeux internationaux et institutionnels des signes de qualité et d'origine


参考 1

WTOパネル報告(WT/DS174/R)の結論

-アメリカの申立てとそれに対するパネルの結論の主要部分の翻訳-

1.内国民待遇の原則

(1) 第3国の産品のEUの制度への登録の可能性

(アメリカの申立て)

7.38 アメリカは、EU域外のWTO加盟国地域の地理的表示についてEUの保護の制度と同等の制度の採用とEUからの産品の保護について互恵制を要求しているEU規則第121)条の条件を当該加盟国が満たしている場合においてのみEU規則の下に登録できるということに異議を申し立てている。

(パネルの結論)

7.238 パネルは、同等と互恵の条件に関し、保護の可能性の適用の場合、EU規則は、 GATT1994年第1114条に合致しない形で、輸入産品に対して有利でない待遇を供与していると結論する。

(2)     申請手続き

(アメリカの申立て)

7.244  アメリカは、申請手続きが第3国にある地理的地域に関連した登録申請をヨーロッパの管轄当局に直接行うことを認めていないので、EU規則はTRIPS協定31条、及びTRIPS協定第21条に組み込まれているパリ条約(1967)第2(1)条に合致していないとの異議を申し立てた。EU規則がEUの国民に対しては政府を通じて直接EUに申請できる方法を提供しているが、EU以外の国民の自国の地理的表示の登録の申請は代行してくれる自国の政府に行なわなければならないので、これは不利な待遇である。EUの加盟国ではそれを法的義務としているが他の国では自発的としているのでEUの規則は同等の待遇を与えていない。

(パネルの結論)

7.307  パネルは、第3国からの申請の手続きに関して、EU規則は、第3国の政府による審査とEUへの提出を要求しているので、GATT19441114条に合致しない形で不利な待遇を供与しており、これらの要求は、GATTXX(d)条によっても正当化されないと結論する。

(3) 異議の手続き

(アメリカの申立て)

7.313 アメリカは、EU規則は、異議の手続きに関してEU以外の国民に対して有利でない待遇を与えているので、TRIPS協定第31条及びTRIPS協定第2・1条に組み込まれているパリ条約(1967)2条に違反していると申し立てている。 アメリカは、ある地理的表示の登録に反対する権利は、それが原産について誤認させるような方法での使用から守る能力の一部であることから、工業所有権及び知的財産権の保護の一部であると議論している。 

7.314  アメリカは、EUの国民には登録に反対する直接の手段があるが、EUの域外の国民にはそれがないと議論している。異議は第3国の政府機関から提出されなければならないか、異議を行う者あるいは機関が所在するEU加盟国から提出されなければならない。EU加盟国の担当機関はEU規則第7(3)条により必要な措置を取る義務がある。しかし、第3国の政府機関にはその義務がない。政府機関は異議を確認しそれを伝える責任がある。これは、EU域外の国民にとっては高いハードルとなり、有利でない待遇である。これはまた、保護が請求される国に住所又は営業所を有することが条件とされることはないと規定しているパリ条約(1967)第2(2)条に合致していない としている。

(パネルの結論)

7.345パネルは、EUの異議の手続きが第3国の政府による確認と伝達を要求している限り、EU規則は、TRIPS協定第31条に合致しない形で、他の加盟国の国民に対して、有利でない待遇を与えていると結論する。

 (4) 検査機構

(アメリカの申し立て)

7.389 アメリカは、検査機構についての要求は、パリ条約(1967)の内国民待遇の原則を含むTRIPS協定の内国民待遇の義務に合致していないと申し立てている。アメリカは、パネルがこの特別な要求について判定を行うこの係争の結論にとって重要であり、もしそうでなければ、EUEU規則第12(1)条を削除することができ、第12a(2)(b)条の下で他のWTO加盟国が自国において検査機構が設立されているとの宣言を行う要求を通じて、他の名目で、同等性を課することとなるとしている。

7.390 アメリカは、外国の申請者がEU規則第12a(2)(b)条による宣言を行う政府に対して申請しなければならないので、他のWTO加盟国の政府の検査機構への参加はTRIPS協定の内国民待遇に合致していないと議論している。たとえECが異なる法的規定の場合においてもこの特別の検査機構に関する要求が同等の待遇を与えていると主張しても、被申立て人は.このように異なっていても有利でない待遇の基準が満たされていることを証明する義務がある。ECの加盟国は、EU規則により特別の検査機構を設ける義務があり、EUの国民は自動的に他のWTO加盟国が持たないような検査機構を持つことができるので、検査機構はEUと他の加盟国の国民に同等の待遇を与えていないとしている。多くのWTO加盟国ではこのような検査機構が設けられていないのである。よってEUの国民はすべて検査機構に関する要求を満たすことができる立場にあるが、 他のWTO加盟国の国民は、少なくともWTO加盟国がEUの検査機構を確立していない場合は、この条件を満たすことができない。アメリカの政府がどのような基準に基づき、EU規則の要求を満たす地域に検査機構があるべきかを評価する立場にあるかについては明らかでない。

(パネルの結論)

7.463、パネルは、EU規則第10条による検査機構への政府の参加及び第12a(2)(b)条による政府の宣言については、ただし、検査機構についての他の事項を除き、EU規則は、GATT 19941114条に合致しない方法で輸入産品について域内産品より有利でない待遇を与えており、また、これらの要求は GATTXX(d)条によっても正当化されないと結論する。

2.商標に関する申立て

(アメリカの申立て)

7.512 アメリカは、EU規則は、TRIPS協定第161条に違反していると申し立てている。その理由は、EU規則が既存の商標との混同のリスク(likelihood of confusion, risque de confusion)をもたらすGIの使用を商標の所有者が防止できるよう確保していないからであるとしている。この申し立ては、既存の商標の有効性(valid)に関することにのみ関係しており、商標が識別性に欠けていることや産品の原産について消費者に誤認を与えるということで無効になりやすい商標とは関係ない。アメリカは、商標と同一か類似しているGIが使われ得ることについては議論していない。ただ既存の商標と混同することにならないかどうかという点についてのみ議論している。

(パネルの結論)

7.688 パネルは、GIの既存の商標との併存については、EUの規則はTRIPS協定第161条と矛盾(inconsistent)しているが、パネルに提出された証拠を基礎として、これはthisTRIPS協定第17条によって正当化されると結論する。TRIPS協定第243条及び第245条は適用とならない。

3.その他事項

(1) 最恵国待遇

(アメリカの申立て)

7.717 アメリカは、EU規則はTRIPS協定の内国民待遇の原則に合致していないことと同じ理由でTRIPS協定の最恵国待遇の原則にも合致していないと申し入れている。アメリカは、その国民のため国が管理に相当程度介入し、規則を実施することに合意する国からの申請に限って第3国の他のWTO加盟国からの国民の登録が可能であると議論している。EU委員会はWTOすべての加盟国がこの規則を満たしていることを決定する余地はない。ある国は自国の国民のために申請を成功裏に行うことができるが他の国はそうでない。また、アメリカは登録に対する異議申し立ての権利は同等と互恵の条件を満たすWTO加盟国に限られると議論している。これらの理由により、EU規則はEU国民に与えられている有利な待遇を直ちに及び無条件ですべてのWTO加盟国与えていないとしている。

 (パネルの結論)

7.721 パネルは、EU規則第12b条及び第12d条の下での申請と異議の手続きいおいて異なるWTO加盟国の国民に対する差異は見いだせなかった。実行上起きる差異は他のいろいろなWTO加盟国政府の行動に由来しているように見える。しかし、TRIPS協定第4条の最恵国待遇の義務は、ある加盟国、この場合はEU委員会によって与えられる優遇、特権、免除 のみに適用される。アメリカは異なる加盟国に与えられた待遇における差異がどのようにしてEU委員会から与えられるか説明しなかった。したがって、パネルは、アメリカはこの申し立てを支持するためのとりあえずの証明(prima facie case)ができなかったと結論する。

(2) 同種の産品

(アメリカの申し立て)

7.710 アメリカは、EU規則が同等と互恵の条件を適用しているので、同規則はGATT 1994I1条に合致していないと申し立てている。 また、アメリカは、EU規則が同種の産品に適用になり、国内の販売等に影響する措置であることについてGATT1114条の下での内国民待遇の視点からの議論を繰り返している。また、アメリカは、これは GATT 1994I1条の意味の範囲内で第111条第4項に規定されている事項であると議論している。また、アメリカは、輸入産品に対する有利でない待遇に関する議論を繰り返し、また、これらは、直ちに、かつ無条件で他のすべての加盟国に与えられないのである第3国からの輸入産品に対する重要な有利な待遇であると議論している。

(パネルの見解)

7.714 パネルは、EU規則は産品間で差別し、この産品グループの中には、輸入産品と域内原産の産品との間には、GATT 19941114の目的に関連する同種の産品が存在することにEUが異議を唱えなかった本パネル報告パラグラフ7.229の結論を想起する。

EU規則による保護は、ある名称で登録された産品と比較できる(comparable)産品に関する名称の使用に対してなされる。パネルの見解としては、GATT 1994I1条の目的で、WTO加盟国を含む他の国の輸入産品の間で同種の産品が存在すると結論することで十分な基礎となると思うということである。

(3) 保護の最低限の基準

(アメリカの申立て)

7.730 アメリカは、EU規則が検査機構を含み、同等と互恵の条件を満たしていない他のWTO加盟国の関心のある者に対しては、EU域内を通じて統一した方法でこれらの国の地理的表示を保護する法的な手段を提供していないので、EU規則はTRIPS協定第222条に合致していないと申し立てている。EU規則第2条は一定の産品の地理的表示については規則に従って獲得できるが他の方法では地理的表示の保護を認めるようにはなっていないように見える。申し立て人がある措置がWTOの義務に合致していないことの一応の証明をしたのであれば、被申し立て人は、他の国内措置が申し立てられた合致していないことを打ち消すことを示すことを含み、合致していないことに反論する義務がある。EUあるいは加盟国の法制度において規則が合致していないことを補う法的な他の制度がどこかにあれば、EUはそれを示すべきとであったが、EUはそれに失敗したとアメリカは主張した。 

(パネルの結論)

7.758この申し立てに関して本報告パラグラフ7.751, 7.755及び 7.757の結論(事実認定)に鑑み、パネルは、EUTRIPS協定第222条の下での義務の実施に失敗したということに対するとりあえずの証明をアメリカはしなかったと結論する。

 


参考 2

関係する国際協定等の条文

1.GATT協定1994

1一般的最恵国待遇

1 いずれかの種類の関税及び課徴金で、輸入若しくは輸出について若しくはそれらに関連して課され、又は輸入若しくは輸出のための支払手段の国際的移転について課せられるものに関し、それらの関税及び課徴金の徴収の方法に関し、輸入及び輸出に関連するすべての規則及び手続に関し、並びに第32及び4に掲げるすべての事項に関しては、いずれかの締約国が他国の原産の産品又は他国に仕向けられる産品に対して許与する利益、特典、特権又は免除は、他のすべての締約国の領域の原産の同種の産品又はそれらの領域に仕向けられる同種の産品に対して、即時かつ無条件に許与しなければならない。 

3内国の課税及び規則に関する内国民待遇)

4 いずれかの締約国の領域の産品で他の締約国の領域に輸入されるものは、その国内における販売、販売のための提供、購入、輸送、分配又は使用に関するすべての法令及び要件に関し、国内原産の同種の産品に許与される待遇より不利でない待遇を許与される。この項の規定は、輸送手段の経済的運用にのみ基き産品の国籍には基いていない差別的国内輸送料金の適用を妨げるものではない。 

20条(一般的例外)
 この協定の規定は、締約国が次のいずれかの措置を採用すること又は実施することを妨げるものと解してはならない。ただし、それらの措置を、同様の条件の下にある諸国の間において任意の若しくは正当と認められない差別待遇の手段となるような方法で、又は国際貿易の偽装された制限となるような方法で、適用しないことを条件とする。 (a)(c) (略)

 (d) この協定の規定に反しない法令(税関行政に関する法令、第24及び17条の規定に基づいて運営される独占の実施に関する法令、特許権、商標権及び著作権の保護に関する法令並びに詐欺的慣行の防止に関する法令を含む。)の遵守を確保するために必要な措置 

2.TRIPS協定 

2条(知的所有権に関する条約)

1. 加盟国は、第2部から第4部までの規定について、1967年のパリ条約の第1条から第12条まで及び第19条の規定を遵守する。 

2. 第1部から第4部までの規定は、パリ条約、ベルヌ条約、ローマ条約及び集積回路についての知的所有権に関する条約に基づく既存の義務であって加盟国が相互に負うことのあるものを免れさせるものではない。 

3条(内国民待遇)

1. 各加盟国は、知的所有権の保護に関し、自国民に与える待遇よりも不利でない待遇を他の加盟国の国民に与える。ただし、1967年のパリ条約、1971年のベルヌ条約、ローマ条約及び集積回路についての知的所有権に関する条約に既に規定する例外については、この限りでない。実演家、レコード製作者及び放送機関については、そのような義務は、この協定に規定する権利についてのみ適用する。ベルヌ条約第六条及びローマ条約第161(b)の規定を用いる加盟国は、貿易関連知的所有権理事会に対し、これらの規定に定めるような通告を行う。

注:この条及び次条に規定する「保護」には、知的所有権の取得可能性、取得、範囲、維持及び行使に関する事項並びにこの協定において特に取り扱われる知的所有権の使用に関する事項を含む.

16(与えられる権利)

1 登録された商標の権利者は、その承諾を得ていないすべての第三者が、当該登録された商標に係る商品又はサービスと同一又は類似の商品又はサービスについて同一又は類似の標識を商業上使用することの結果として混同を生じさせるおそれがある場合には、その使用を防止する排他的権利を有する。同一の商品又はサービスについて同一の標識を使用する場合は、混同を生じさせるおそれがある場合であると推定される。そのような排他的権利は、いかなる既得権も害するものであってはならず、また、加盟国が使用に基づいて権利を認める可能性に影響を及ぼすものであってはならない。 

17(例外)

加盟国は、商標権者及び第三者の正当な利益を考慮することを条件として、商標により与えられる権利につき、記述上の用語の公正な使用等限定的な例外を定めることができる。 

3.パリ条約 1967 

2条 (同盟国の国民に対する内国民待遇等)
(1) 各同盟国の国民は,工業所有権の保護に関し,この条約で特に定める権利を害されることなく,他のすべての同盟国において,当該他の同盟国の法令が内国民に対し現在与えており又は将来与えることがある利益を享受する。すなわち,同盟国の国民は,内国民に課される条件及び手続に従う限り,内国民と同一の保護を受け,かつ,自己の権利の侵害に対し内国民と同一の法律上の救済を与えられる。
(2) もつとも,各同盟国の国民が工業所有権を亨有するためには,保護が請求される国に住所又は営業所を有することが条件とされることはない。

4.地理的表示に関するEU規則(2003年改正規則) 

7

3 正当な利害関係を有する自然人又は法人は誰でもその居住し、又は設立された加盟国の担当部局に十分に内容のある文書を送ることにより登録申請に異議を申し立てることができる。担当部局は、これらの意見や意義について検討し最終期限までに必要な措置を講じなければならない。 

12

1 国際約束に不利益を与えることなく、この規則は、以下の条件を満たす場合、第3国の農産物又は食品に適用することができる。

―第3国が第4条に規定する要件と同一又は同等の保証を与えることができること
―関係する第3国が、この規則に定められているものと同等の調査計画及び反対する権利を有すること
―関係する第3国は、ECからの相当する農産物又は食品に対し、ECで得られる保護と同等の保護を与える準備があること 

12a

2 1パラグラフに規定する第3国は、この規則の要件が満たされたと考えるときは、以下を伴って欧州委員会に当該登録申請をしなければならない。

(a)原産地呼称又は地理的表示がその国で保護され、又は確立される基礎となる法律の条文及び適用法の記載

(b)10条に記載されている機構がその領域で確立されているとの宣言

(c)その評価の基礎となるその他の文書

14

1 当該規則に基づき原産地呼称又は地理的表示が登録される場合、当該商品と同一の種類の商品及び第13条に規定された事項に該当するような使用に関するあらゆる商標登録の出願申請が、当該原産地呼称又は地理的表示の出願が欧州委員会に提出された日以後に行われた場合は、当該出願を拒絶しなければならない。

同様の状況下で行われた商標登録は、無効としなければならない。 

2 欧州規則を遵守の下、原産国における保護の日又は原産地呼称若しくは地理的表示の登録出願の欧州委員会への出願の前に、加盟国の領域内において第13条に規定された事項に該当するような使用及び出願され、登録され又は使用により確立された商標が、善意で行われた場合は、原産地呼称又は地理的表示の登録にかかわらず、当該商標を使用することができる。ただし、19981221日の欧州議会指令(89/104EEC)、商標に関する加盟国間で近似する法律、かつ又は共同体商標に関する19931220日の欧州議会規則(EC NO40/94 )に規定された無効又は取消しに該当してはならない。

3 商標の評判、名声及び当該商標が使用された期間の長さに照らして、原産地呼称又は地理的表示の登録が、商品の真正な同一性に関して消費者を誤解させる場合は、当該原産地呼称又は地理的表示の登録を行うことはできない。